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融資審査の話

決算書を出すだけでは、
なぜ審査が進まないのか。

決算書は、会社の状態を最も正確に表した書類です。にもかかわらず、それだけを提出しても融資の話が前に進まないことがあります。

理由は、決算書の出来が悪いからではありません。銀行の審査が、決算書だけでは埋まらない構造で進むからです。その構造を6つに分けて説明します。

1

決算書は「過去」の記録である

決算書に書かれているのは、終わった一年の結果です。一方で銀行が判断したいのは、これから5年、7年と返済が続けられるかどうか。見たい期間と、書かれている期間が違います。

過去の利益が出ていれば有利には働きます。しかし「その利益が今後も続く」とは決算書のどこにも書かれていません。来期の受注はどうなっているのか、設備を入れたら収支はどう変わるのか。返済の元手がどこから出るのかは、決算書の外にあります。

審査担当者の立場から見ると 決算書だけを渡されると、来期以降の数字は自分で推定するしかありません。推定に使えるのは過去の推移だけなので、どうしても保守的な見立てになります。
2

結果は書いてあるが、理由が書いていない

売上が前期から12%落ちた。決算書はこの事実を示しますが、なぜ落ちたのかは語りません。

納品時期が期をまたいだだけなのか、主要取引先を失ったのか。前者なら一時的な話ですが、後者なら構造的な問題です。返済能力への影響はまったく違います。説明がなければ、担当者は不利なほうを想定して検討を進めます。

決算書に書かれていること審査で知りたいこと
売上高が前期比 12% 減
減った理由は何か。来期は戻るのか
売上原価率が 3pt 上昇
原材料か、外注か。価格転嫁はできるのか
短期借入金が増加
運転資金か、赤字の穴埋めか
役員報酬 2,400万円
実態としていくら会社に残せるのか
3

決算書は、銀行の手で引き直される

銀行は提出された決算書をそのまま使うわけではありません。自行の基準で「実態」に修正したうえで評価します。

社長からの借入金を資本とみなすか負債のままにするか。回収見込みの薄い売掛金や、動いていない在庫をどう見るか。役員報酬をどこまで戻して考えるか。これらの判断は、説明がなければ銀行側の裁量で決まります。

実態としては十分に返済できる会社でも、修正の前提を共有しないまま数字だけを渡せば、不利な形で引き直されることがあります。

4

審査は、担当者が書いた文章で進む

ここが最も見落とされやすい点です。

融資の可否は、面談したその場では決まりません。担当者が稟議書を書き、支店内で回覧され、金額によっては本部の審査部まで上がります。最終的に判断する人は、あなたに一度も会いません。

つまり、社長がその場でどれだけ熱心に説明しても、審査部に届くのは担当者が書いた文章だけです。そして担当者は、あなたの業界の専門家ではありません。

問われているのは 担当者が読んで理解でき、そのまま稟議書に書き写せる材料を渡せているかどうか。口頭の熱意は、書類を経由した時点で失われます。

資料の構成が結果を左右するのは、この一点によります。担当者が探さなくても要点が見つかるか。数字の根拠が、そのまま引用できる形で書かれているか。ここが整っている会社は、同じ内容でも話が早く進みます。

5

担当者には、一社にかけられる時間がない

もう一つ、前提として押さえておきたいことがあります。融資の担当者は、あなたの会社だけを見ているわけではありません。

一人で数十社を受け持ち、自身の目標数字を追い、既存先の対応や事務処理にも追われています。一件の案件にかけられる時間は、こちらが想像するよりずっと限られています。

資料が整っていないと何が起きるか 担当者の側に「読み解いて、整理して、書き直す」という作業が発生します。その作業時間は、他の案件との取り合いになります。結果として、着手が後回しになったり、質問のやりとりだけで数週間が過ぎたりします。

逆に、そのまま稟議に転記できる資料が最初から手元にあれば、担当者にとっては手間の少ない案件です。前向きに進めやすくなり、社内で通すための材料も揃っています。

資料を整えることは、審査担当者を説得する行為というより、担当者の作業を肩代わりする行為に近いと考えています。時間のない相手に、判断に必要なものだけを、探さなくてよい形で渡す。それが結果的に、話の進み方を変えます。

6

数字で測れない部分は、伝えなければ存在しない

審査では、決算数値による定量評価に加えて、定性面も見られます。取引先との関係の長さ、技術やノウハウ、経営者の経験、後継者の有無といった項目です。

ただし定性面は、決算書には一行も書かれていません。伝えなければ、評価の対象にすらなりません。結果として、決算数値だけで判断が進みます。

中小企業の決算数値は、規模の面でどうしても不利になりがちです。定量で足りない部分を定性で補えるかどうかは、それを言葉にして渡せているかで決まります。

では、決算書に何を足すのか

足すべきものは、突き詰めると三点です。この三点が揃っていれば、担当者は読み解く作業をせずに、そのまま稟議へ持ち込めます。

返済原資
返済の元手がどこから、いくら出るのか。営業キャッシュフローと年間返済額を並べ、余力を数字で示します。
計画の裏付け
売上計画の根拠。内示書、契約、過去の実績など、何に基づいて積み上げたのかを分けて書きます。
リスクへの備え
前提が崩れる要因と、そのときの影響額、対応方針。悪い想定を先に出すことが、かえって信用につながります。

この三点が伝わる資料を、お作りします。

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本ページについて 金融機関の審査基準や運用は、機関ごと、また案件ごとに異なります。本ページは一般的な考え方を整理したものであり、特定の結果を保証するものではありません。個別の税務・法務の判断については、税理士等の専門家にご相談ください。